世代間格差をめぐる議論の中で、最もよく聞かれるのは年金に関するものである。「若い人ほど保険料は高くなるが、将来の給付は削減される」「今のお年寄りは潤沢な年金を受け取っている」。これこそが世代間格差の典型例といえる。
2004年の年金制度改革では「給付の削減」「保険料の引き上げの上限」などを定めた。しかし、現実には、保険料の引き上げだけが実施されて、デフレなどの理由で給付削減には手が付いていない。
厚労省も年金について、世代ごとの給付と負担の見通しを公表している。厚生年金でいうと「現在70歳の人は、生涯で払った保険料の6・5倍の年金を受けとるが、0歳の赤ちゃんでも保険料の2・3倍の年金を受け取れる」としている。
注意すべきは、この試算には保険料の雇用主負担が含まれていない、基礎年金の公費負担分が考慮されていない、といった問題があることだ。
年金をめぐる世代ごとの給付と負担の試算は、筆者自身も含め、数多く公表されているが、「1955-60年生まれの世代を境として、それ以前の世代は受取超過、それ以降の世代は負担超過になる」というのが、ほぼ共通した結果のようだ。
「年金は世代間の助け合い」という主張もあり、こうした計算は損得勘定だという批判もある。しかし、現に存在する世代間の格差を容認することは、そう簡単なことではないだろう。
年金だけに限らず、医療や介護保険制度もまた世代間の格差が大きい。ただし医療では、年金とは異なり若者世代も給付を受けているので構造はより複雑である。「2008年度の国民医療費34・8兆円のうち、およそ55%が65歳以上の世代のためのもの」である。
所得の少ない高齢者の医療費を、現役世代が負担するのは当然としても、その負担の度合いが大き過ぎればやはり問題であろう。
その代表的な例が、大企業のサラリーマンが加入する健康保険組合の現状である。健保組合では組合員への給付以外に、後期高齢者医療制度などの高齢者の医療負担のための拠出金が重荷となり、1992年には1827組合あったが、2010年には1462組合に減少している。
医療費は今後さらに増加すると見込まれている。医療費の増加は若い世代の負担が増えることを意味するが、「病気を治し健康寿命を延ばすというメリット」もある。日本はアメリカなどに比べても医療費の経済規模に占める割合は小さい。だからといって「負担を現役世代にだけ押し付ける仕組み」はすでに限界にきている。
国が福祉予算のしっかりとした枠組みをとって、
安心して暮らせる老後を願いたいものである。
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