2012年1月アーカイブ

世代間格差をめぐる議論の中で、最もよく聞かれるのは年金に関するものである。「若い人ほど保険料は高くなるが、将来の給付は削減される」「今のお年寄りは潤沢な年金を受け取っている」。これこそが世代間格差の典型例といえる。

 2004年の年金制度改革では「給付の削減」「保険料の引き上げの上限」などを定めた。しかし、現実には、保険料の引き上げだけが実施されて、デフレなどの理由で給付削減には手が付いていない。

 厚労省も年金について、世代ごとの給付と負担の見通しを公表している。厚生年金でいうと「現在70歳の人は、生涯で払った保険料の6・5倍の年金を受けとるが、0歳の赤ちゃんでも保険料の2・3倍の年金を受け取れる」としている。

 注意すべきは、この試算には保険料の雇用主負担が含まれていない、基礎年金の公費負担分が考慮されていない、といった問題があることだ。

 年金をめぐる世代ごとの給付と負担の試算は、筆者自身も含め、数多く公表されているが、「1955-60年生まれの世代を境として、それ以前の世代は受取超過、それ以降の世代は負担超過になる」というのが、ほぼ共通した結果のようだ。

 「年金は世代間の助け合い」という主張もあり、こうした計算は損得勘定だという批判もある。しかし、現に存在する世代間の格差を容認することは、そう簡単なことではないだろう。

 年金だけに限らず、医療や介護保険制度もまた世代間の格差が大きい。ただし医療では、年金とは異なり若者世代も給付を受けているので構造はより複雑である。「2008年度の国民医療費34・8兆円のうち、およそ55%が65歳以上の世代のためのもの」である。

 所得の少ない高齢者の医療費を、現役世代が負担するのは当然としても、その負担の度合いが大き過ぎればやはり問題であろう。

 その代表的な例が、大企業のサラリーマンが加入する健康保険組合の現状である。健保組合では組合員への給付以外に、後期高齢者医療制度などの高齢者の医療負担のための拠出金が重荷となり、1992年には1827組合あったが、2010年には1462組合に減少している。

 医療費は今後さらに増加すると見込まれている。医療費の増加は若い世代の負担が増えることを意味するが、「病気を治し健康寿命を延ばすというメリット」もある。日本はアメリカなどに比べても医療費の経済規模に占める割合は小さい。だからといって「負担を現役世代にだけ押し付ける仕組み」はすでに限界にきている。

 

国が福祉予算のしっかりとした枠組みをとって、

安心して暮らせる老後を願いたいものである。

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「ドル建ての保険に入っていて、失敗したかなと......でも、円高なので、解約したくてもできないんです」

 秋以降、増えてきた相談です。私は「たしかに円高は響きますよね。ただ、『もともと入らない方がいい保険』だと思います」とお答えしています。

 外貨建ての保険が売られている理由は、販売手数料が高いことと、営業担当者の教育が間違っているからではないかと、想像しているからです。

 「ドル建て終身保険」という商品を例にします。一生涯の死亡保障が確保できる保険ですが、営業現場では「老後の生活資金準備に」などと案内されることが多いでしょう。

 私が、保険会社の代理店担当者から説明された「この商品の魅力」は、

(1)同じ大きさの保障を持つ場合、運用利回りを高く見込んでいる分、円建ての保険より保険料が安くなる

(2)外貨で運用するため、解約時に払い戻されるお金の殖え方が、円建て商品より大きくなる

というものでした。よくある説明です。ただ、安い保険料で多額の払戻金が得られるという説明には、人の「願望」に訴える部分もある気がします。為替レートによって、その金額は大きく変わるからです。

 もとより、青年期や壮年期のお客様に、老後の資金準備のための商品を案内する際、10年後・20年後の為替相場の予想ができる人などいないはずです。すると、資産形成のためにふさわしい商品かどうかを判断するポイントは、一つだと考えられます。契約にかかる「コスト」です。

 残念ながら、いや、極めて不可解なことですが、情報が開示されていないので、コストを把握する方法はありません。しかし、ヒントはあります。「週刊ダイヤモンド」2011年4月30日・5月7日合併号に、数社の商品について、手数料率が掲載されているからです。


ドル建て終身保険について見てみると、最上級代理店では契約後1年目に54%、5年間の累計で90%となっています。1年目の手数料率は「5.4%の間違いでは?」と驚かれそうですが、2年目から5年目までも毎年9%のコストがかかっていることになります。5年目以降、率は違っても手数料が払われるケースを想像する必要もあるでしょう。

 もちろん、保険料の払込期間や手数料が払われる年数によって、平均コストは変動します。手数料が契約直後の数年間に厚く支払われる場合、払い込み年数が長期に渡るほど平均コストは下がります。

 とはいえ、今回の試算に用いた手数料にしても、お客さまが負担するコストの一部に過ぎないはずです。

 ある保険会社の方は、「代理店に払うボーナスもある。売り上げが大きな代理店には、人材を採用する際の支援金を出す会社だってある。手数料率だけでは、代理店にかかるコストなど把握できない」と言います。

 さらに「保険会社の取り分」もあるはずです。こうしたことを考えると、ドル建て終身保険を資産形成のために利用する理由は見つけ辛くなります。

 それでも、この類の保険に加入なさっている方からのご相談は絶えません。「販売手数料が大きい商品を優先して売るのがプロ」と割り切っている売り手が多いのか、「外貨建て商品ならではの魅力」といった、誤ったセールストークを指導する保険会社を疑わない売り手が多いのか、私にはわかりません。

 外貨建て保険のパンフレット等には「払い込み保険料から、契約の締結・維持・保険金支払い等に必要な費用を負担いただきます」といった文言があります。為替リスクについても触れてあります。

 為替リスクは資産を大きくすることもありますが、多額のコストは、運用の足を引っぱるだけです。「投資信託等では考えられないコストがかかります」などと、一言、伝えなくていいのでしょうか。


 

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